低体温症(Hypoxia)

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 ●低体温症(軽症:深部体温32℃以上、重症:深部体温32℃未満)

症状 対応
軽症  震えが発生する。(ただし、アルコールや低血糖、高所の低酸素状態では振るえが起こりにくい)思考力低下、判断力がにぶくなる。


 無気力・不機嫌になる。協調性がなくなる。体を暖めること以外、何も考えなくなる。動作がぎこちなくなる。つまずきやすくなる。
 それ以上冷えないようにする。乾いた服に着替える。乾いた服がない時は、濡れた衣類を絞って着せ直す。シート・シュラーフなどで保温する。暖かい物を飲ませる。(アルコールは有害)
 お湯の入ったびんで鼠径部(首、脇の下、足の付け根など)を暖める。もう一人シュラフに入って体で暖める。お湯に体をつける。(ただし、軽症の場合のみ)

 眠ると体の震えが止まるので、体が温められるまで、許してはいけない。諦めたり悲観的になると、よけい体温の生産量が低下することが知られている。最後まで明るくすることが必要。
重症  震えが止まる。防寒に無関心。(帽子・ミトンをつけない)錯乱、失見当識(時間、場所、現在の状況、自分が誰であるか正しく認識できなくなる) 衣服を脱ぎ捨てる。わけの分からない事をしゃべる。目が見えなくなる。(1時間位前)筋肉の硬直。


 傾眠(刺激がないと眠る)・し眠(強い刺激がないと眠る)・昏睡。(刺激しても覚睡しない) 猿手(手が垂れ下る、正中神経の麻痺)立っていられなくなる。尿でよごれる。果物のようなアセトン臭。皮膚は血の気がなく、少し青みをおびる。



 不整脈。(心拍数が1分間20回程度まで下がり不規則になる。期外収縮。心室細動) 心室細動を起こすと2〜3分以内で死亡。ただし死んだように見えても生きている場合がある。あきらめない。
 体を動かさない。(手足の低温・低酸素、高カリウムの血液が心臓に流れ込み、心室細動がおこる) 野外での加温はしない。(急激な加温による血圧の低下→加温によるショックが発生する)


 ※体が冷やされ続けていれば、数時間〜数日生き続ける場合がある。(代謝の冷蔵庫) 心臓を刺激しない。できるだけ慎重に取り扱い、早急に救急病院に収容する。加温・加湿した空気か酸素で治療する。


 心室細動の治療は除細動と呼ばれる電気ショックにより行なう。 点滴により血圧を上げる。(病院の救急治療室でも、重傷の低体温症の死亡率は50〜80%にも達する)


 病院に収容できない場合には、胴体だけをきわめてゆっくりと温める。マウスツーマウスも効果がある。

 とくに糖尿病、動脈硬化症の人は要注意。

 ●低体温が及ぼす生理学的変化

区分 深部体温(℃) 症  状
36 基礎代謝率の増大
軽度 35 戦慄による熱産生が最大
34 健忘、講音障害
33 運動失調
中等度 32 混迷、酸素消費量25%減少
31 戦慄による熱産生が消失
30 心房細動、不整脈出現、心拍量1/3減少、筋硬直出現
29 瞳孔散大
28 心室細動発生の危険性
高度 27 筋硬直が消失
26 反射、痛覚が消失
25 脳血流が2/3減少
24 著しい低血圧
23 角膜反射消失
22 心室細動発生の危険性最大
超低体温 20 脳波が平坦化
18 心臓の不全収縮発生
16 救命しえた成人の最低体温
15.2 救命しえた新生児の最低体温
10 酸素消費量92%減少
9 救命しえた人為的最低体温

 ●体温と脳酸素消費量の関係

体温(℃) 酸素消費量(%) 循環停止許容時間
37 100 4分
32 75〜80 10分
30 60〜70 15分
27 50 30分
23 35 1時間
20 25 1時間30分
15 15 2時間

低体温症と凍傷(ふせぎ方・なおし方)J.A.ウィルカースン編/栗栖 茜訳 山洋社より

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