山岳遭難の防止対策

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★山の危機管理

 危機管理(Emergency management)とは、事前対策としての@Mitigation(被害軽減)、APreparedness(事前準備)と、事後対策としてのBResponse relief(応急措置・波及防止)、CRecovery・Reconstruction(復旧・復興)であるとされる。

 遭難者の救助はもちろんのこと、事故が発生しないための予防策は更に大切である。遭難対策を危機管理と信頼性工学により整理すれば次のようになる。


●事前対策(予防対策)

@Mitigation(被害軽減・影響緩和)⇒主に物理的・ハード面の対策

■排除⇒天候や自身の力量判断、タイムリミットなどによる山行の中止・撤退

■代替化⇒計画変更・エスケープルートの検討(ただし、未知の沢を下降しないこと!)

■容易化⇒ザイルやピッケル・アイゼン・GPS(紙の地図と併用する)などの道具の利用、装備の軽量化、メンバーの厳選(初心者や力量の分からない人を安易に誘わない)、フィックスロープ・赤布やデポの設置、(登山道や標識の整備)、ただしGPSやビーコンなどの機器を過信しないこと

■影響緩和⇒予備日・非常食、装備(速乾性下着、雨具[ゴアテックス]、ライト・・・ビーコン・ゾンデ・・・)、早立ち・早着き、単独行動の自粛、救助体勢の確立


APreparedness(事前準備)⇒主にソフト面の対策

■保険⇒山岳保険に加入、山岳連盟や体育協会などに加盟し協力体制を整える

■リスクリテラシー・リスクセンス⇒危険予知能力・危険感受性を高める、情報収集(天候・地形・過去の登山記録)、登山計画書(届)の作成、ネット情報を過信しない・鵜呑みにしない

■リスク・コミュニケーション⇒過去や近年の遭難事例を調査、経験者からのアドバイス、グループのミーティング、所属集団への説明と理解

■トレーニング、リハーサル、シュミレーション⇒(体力的・イメージ的)トレーニング、コースの事前偵察(※単独では行わないこと)、レスキュー講習会への参加(救急法・搬送法の教育訓練)、KYT(危険予知訓練)

■インシデント・レポートの活用⇒ヒヤリ・ハットの分析による事故防止(過去の失敗事例を生かす)

■遭難発生時のマニュアルやリスクマップの作成


●事後対策(捜索・救助活動)

BResponse relief(応急措置・波及拡大の防止)

■異常検出(内的・外的)⇒登山届の提出、留守本部の設置、地図・コンパス・GPS・ラジオ・スマホなどを利用して情報収集、通信手段の確保(無線・携帯・スマホ)

■波及拡大の防止⇒迷ったら引き返す、安全地帯への退避、停滞、救助要請

■応急措置⇒救急法・搬送法の実施、実際の救助活動

■長期の捜索⇒協力体制の確立と捜索活動の継続


CRecovery・Reconstruction(復旧・復興)

■報告書の作成⇒外部への情報発信⇒今後の事故防止

■関係先への挨拶、組織の建直し


★山のリスク管理(Risk management)

 個別の山行については、都度対象とする山域に応じたリスク管理が必要。

■リスクの洗出し⇒リスク評価⇒リスクの低減(安全策の実施)⇒残存リスク(Residual risk)の情報化⇒教育訓練、すなわち予防安全のサイクルを回すことが大切。

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