欲求と欲求不満(Need & Frustration)
●マズロー(Maslow)の5段階の欲求(Hierarchy of Needs)
生理的欲求(食欲、性欲、睡眠、生命維持)、安全の欲求(衣、住、財産)、社会的欲求(家族、友人、所属、人間関係)、自尊の欲求(地位、名誉、立身出世)、自己実現の欲求(生き甲斐、自律性)が階層をなすと考えた。基本的にはこのモデルで説明できるが、必ずしも階層をなすとはいえない場合も多い。
後年になって、自己超越の欲求(宇宙との一体感を求める欲求)を追加した。
●一次欲求と二次欲求
生命維持に関する欲求を一次欲求(生理的欲求)、心理的な欲求を二次欲求(社会的欲求、自我欲求)として分けるのが一般的である。この場合でも、必ずしも一次欲求から二次欲求が派生するとは限らない。
●さまざまな欲求
欲 求 (Need) | |
生理的・安全 | 衣食住を求める、病気や怪我なく快適に過ごしたい。 |
機会 | 発表の機会、勉強の機会、出世の機会が欲しい、自分にやらせてほしい。 |
達成 | 達成感を味わいたい、達成目標が欲しい、達成できるようにしてほしい。 |
変化 | 気分転換したい、変わったことをしてみたい、一休みしたい。 |
緊張の開放 | プレッシャーをかけないでほしい、自由にしたい、相談相手が欲しい。 |
安定 | 収入の安定、人間関係の安定、やってることをむやみに変えたくない。 |
参画 | 情報が欲しい、チームの一員になりたい、聞いてもらいたい、提案したい。 |
承認・評価 | 認められたい、ほめられたい、話しかけられたい、特別なことをしたい。 |
理解 | 理解して欲しい、わかって欲しい。 |
公平 | 理由なく差を付けられたくない、自分の意見も聞いて欲しい、平等にしてほしい。 |
親和 | 好意を持ってくれる人に近寄り報いたい、友人を持ちたい。 |
尊厳・自尊 | バカにしないで欲しい、自分の考えを尊重して欲しい、立身出世をしたい。 |
自己成長 | 理想を実現したい、生き甲斐を持ちたい、情熱を燃やす対象がほしい。 |
真善美 | 美しいものを見たい、創り出したい。 |
知的好奇心 | 新しいことを知りたい、疑問(認知不安)を解消したい。 |
●欲求不満(Frustration)
外的原因(環境)に基づくものと、内的原因に基づくものがある。内的原因は、内的欠乏・内的喪失・内的禁止、すなわち心的飽和や葛藤(コンフリクト)などによる。
●欲求不満(Frustration)の適応規制(自我の防衛機制)
抑圧 | 受け入れることの苦しい感情を、無意識下に抑え込むこと。もっとも基本的な防衛機制。投射・同一視・合理化・代償・昇華などを含む。 |
合理化 | いいわけ、責任転嫁、負け惜しみ。しない理由を正当化する。もっともらしい理由を無理して見つけ出す。達成できなかった目標をけなす。方向転換した自分の行動・価値を過大評価する。 |
補償 | 自分の欠点を補うために、それ以外を伸ばそうとする、勉強は苦手だが、スポーツでがんばる。 |
代償 | 最初の目標をより易しいものにすり変える、代わりを無理して探す、自分の果たせなかった夢を子供に託す。 |
置換・転移 | 八つ当たり、不満を本来の対象とは別の対象に向ける。坊主憎けりゃ袈裟まで・・・ |
反動形成 | 憎い相手に対し、逆に必要以上に好意的に振舞う。本来とは正反対の行動をする。好きな子をいじめる。 |
投影・投射 | 他人を非難して自分の気持ちを隠す。自分が嫌っているのに、相手が嫌っているという。 |
同一化(同一視) | 他人の成功を、あたかも自分の成功のように考える。尊敬する人の外観をまねる。トラの威を借るキツネ。 |
退行 | すねる、泣く、甘える、今までできていたことができなくなる、子供のようになる。できるのにできないと断る。 |
逃避 | 避ける、付き合わない、自閉、病気・空想、現実からの逃避。腹痛を理由に休む。試験の前に、掃除や読書、他の困難な目標に意味もなく(優先順位を考慮せず)熱中する。 |
攻撃 | 攻撃反応は、積極的・消極的、身体的・言語的、直接的・間接的、外的・内的などに分けられる。自己破壊的反応も含まれる。 |
消極的攻撃 | 返事しない、サボる、協力しない、打ち解けない、援助を求めない。 |
積極的攻撃 | 口答え、荒さがし、悪口・非難・デマをとばす、反抗。 |
昇華 | 趣味・スポーツ・芸術などに打ち込む、一見社会的に意義のあることに打ち込む。 |
迂回 | 直接、障壁を乗り越えられないとき、迂回して果たそうとする。現実的な適応行動といえる。お母さんに言ってだめな時、おばあちゃんに言う。 |
否認・否定 | 現実を拒否して、自分のまちがいを認めない、そうして自分を保つ。 |
打ち消し | バカ騒ぎをする、他の行為をしてごまかす。 |
隔離 | 不安をもたらす原因を前もって避けておくこと。物忌みなど。 |
形式化 | うわべだけ取り繕って、それで完成したものと見なす。 |
知性化 | 感情を抽象化して表現する。客観的に眺める。 |
分離 | 観念とそれに伴う感情を分離する。 |
あきらめ | 欲求を捨てる、ほめられてもけなされても無感動になる。 |
抑制 | 自分にとって都合の悪い記憶・情動・欲望を意識的に考えないようにする、明日は明日の風と受け流す。 |
(抑圧) | ふさぎこんで何もできなくなる、決断力がにぶくなる。 |
摂取・取り入れ | 自分の中に、自分以外のものを取り込む。同一化の一種。お守り。 |
白昼夢 | 逃避の一種。 |
定着・固着 | ステレオタイプで意味のない事を繰り返す。どうでもいいことに執着する。 |
キーワード⇒「適応行動」 「防衛機制」 「不適応行動」 「過剰適応」 自己実現(Self actualization)