認知心理学(Cognitive psychology)

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●記憶内容の自然の変容(Natural Changing of Knowledge)

 一つは、自分の持っている既有知識と一致する方向への変容である。最初は矛盾を感じていた断片的知識も、次第に一貫した知識(スキーマ)に体系化されて(認知的不協和の解消)、結局その断片的知識は最初とは微妙に違ったものになってしまう。

 もう一つは、そうであってほしい、あるいは、そうあるべきだという方向への変容である。白熱した議論をしたあとの議事録がしばしば物議をかもすのは、それぞれの記憶知識がそれぞれに変容してしまったためである。(認知的均衡理論)


●認知的不協和理論(Cognitive Dissonance Theory)

 相矛盾する二つの認知が同時に存在するとき、それを解消するために一方の認知が、自然に変化することを説明する理論。既になされた行動に対しては、更に協和を高めるための、新たな情報を積極的に収集したり、不協和を高めるような選択を避けたりする行動が説明できる。


●認知的均衡理論・バランス理論(Cognitive Balance Theory)

 親友と何か(x)についての意見が合わないと、2人の関係(自分P、他人O)は緊張する。このとき、Oとの関係を変えるか、Xについての考えを変えるかすれば、3者関係は安定する。このように、POX関係を考えることで、関係の均衡-不均衡をとらえる理論。


●認知不安(Cognitive Anxiety)

 何がなにやら、わけが分からない状態。人は認知不安を嫌う。知的好奇心を刺激して、情報の探索行動へと駆り立てる。しかし、その場でとりあえず分かってしまおうとすれば危険である。


●自己モニタリング能力を向上させる。(Self Monitoring)

 (自己目標、達成行動、自己観察、自己検討、自己評価、自己強化) 管理用の注意を残しておく。感情を安定させる。


●記憶に頼らない

 頭の中から、外へ出して整理する(外化)。メモをとる。何かに関連付けて記憶する。チャンキング(Chunking)支援。


●知識の活性化(Knowledge Activity)

 ミーティング、他の人に講義する。(より高度化・体系化する)、新陳代謝をはかる。


●メタ(超)認知能力(Meta Cognitive Ability)

 自分自身の認知行動を認知する能力。誤るかどうかあらかじめ予想が付けられる能力と、誤りに気付く能力。自己フィードバック能力、自己評価能力、自己訂正能力。メタ認知能力のない人→恐いもの知らず。→ホモンクルス(Homunculus)


●スキーマ(Schema)

 パターン化された認知や動作のまとまり。


●知識の質を深める(Knowledge Quality)

 ・記憶:定義が言える。・理解:他の事と関連づけられる。・応用:具体例をあげられる。・分析:現実の分析ができる。・総合:新しい関係を作り出せる。・評価:価値を評価できる。


●ホモンクルス(Homunculus)

 頭の中の小人。自己モニタリング能力(Self Monitoring)、メタ知識(Meta Knowledge)を考える上での仮想頭脳。@自己目標の設定、A達成行動、B自己観察、C自己検討、D自己評価、E自己強化の6つのサイクルで構成される。


●自己目標(Self Target)の設定

 @外部目標と内部目標の整合をはかる。外部目標を吟味する。A計画する。B実行する。計画−実行−評価を最適化する。C自己モニタリング力をつける。D関連知識を増やす。E内省する。E外に出してみる。F外からの支援を使う。の7つの位相を考える。


●思考実験(Mental Simulation)

 仮想的な試行錯誤。短期記憶の容量的制約と時間的制約により完璧ではない。したがって紙に書いたり(外化)、仲間と話し合ったりすることが大切。


●潜在記憶(Implicit Memory)

 突然、昔のある光景が想起されたり(ポップアップ記憶)、20年ぶりの水泳がなんなくできたり(手続き的記憶)などなど、ほとんど意識的な努力なしに過去がよみがえってくることがある。これを潜在記憶と呼ぶ。健忘症患者でも、潜在記憶の部分は、記銘も貯蔵もほとんど損傷を受けないことが知られている。(健忘症)


●ツァエガルニク効果(Zeigarnik Effect)

 目標が達成されないで中断した課題は、緊張が持続して記憶の保持が良い現象。ツァイガルニク効果ともいう。


●クリティカル・シンキング(Critical Thinking)

 日常生活の中では、思考結果の論理的な正しさよりも、その質が問われることのほうが多い。より良質の結論を引き出すためには、人の思考のくせを知った上で、みずからの思考を批判的に吟味する態度や技術が必要となる。それには次の心がけが大切である。知的好奇心、客観性、開かれた心、柔軟性、知的懐疑心、知的誠実さ、論理性、追及心、決断力、寛容性。思考結果を吟味する3つの観点(適切性、真実性、蓋然性)


●ヒューリスティック思考(Heuristic Thinking)

 誤るリスクはあっても、その時その場で「とりあえずの解答」を出してみるという思考方略。

(1)思考に使う認知的コストが低い。

(2)論理的には誤っていても、その時その場では妥当なことが多い。

(3)その時その場にある手がかりと、それに駆動され活性化された頭の中の知識が思考に使われる。クリティカル思考がなされないと、とりあえず出した(思いついた)一つの可能性が、最終的な結論として固着してしまう。そこに、ヒューリスティック思考のリスクがある。


●タキサイキア現象

 衝突や墜落など極度の緊張下において、周囲の動きがスローに見える現象。脳の誤作動。緊急時に普段の数倍の瞬発力を発揮することもある。


●絶えず知識の活性化を図る(Knowledge Activity)

 人が頭の中に貯蔵した知識はすぐに不活性化してしまい、その知識を必要とするときにタイミングよく思い出せない。逆に、その時その場で活性化している知識だけが使われてしまい、思い込みエラーを起こさせることがある。


●注意の集中と持続(注意を集中することと、それを持続することとは別ものである)

(1)真剣勝負型、水準以上の仕事を着実にこなすが、一つのことにのめり込んでしまい視野狭窄、思い込みエラーをおかしやすい。ストレスに注意。

(2)一発勝負型、リスク管理、時間管理がへたなので、危なっかしい。きまぐれであるが壷にはまると凄い仕事をする。たるみによるミスを犯しがち。

(3)気配り型、状況に即応できるし、対人関係も良好。しかし、浅い仕事しかできない。見逃しや、うっかりミスを犯しがち。

(4)じっくり型(耐久型)、マイペースで長期目標に向かって努力できるが、適切な状況認識ができないので、ときには邪魔者的な存在になりがち。時間遅れにならないように、注意が必要。

   詳しくは、海保博之著『人はなぜ誤るのか』福村出版を参照。

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