リスク(Risk)

トップページ>リスクと安全

 リスクはどこにでもあります。寝ているときでも、車で出掛けた時でも、仕事中にももちろんあります。リスクを正しく認識して山にでかけることが必要です。

 リスクマネジメントを理解している人は山では遭難しないだろうか? 逆に、はめを外しすぎて、すぐさま遭難しかねない。 (⇒制御の解除)


●ハザード(Hazard)

 ある特定の環境で危害をもたらし得る(潜在性を持つ)状況、あるいは物。危険(Danger)、潜在危険。


●リスク(Risk)

 危害(Harm)の発生する確率と危害の重大さとの組み合わせ。

 ある一定の時間の中で、具体的な不利益(or有益)な出来事が起こる確率。あるいは何かを試みることの結果として、望ましくない(or望ましい)事象が起こる確率。天候、季節、年齢、力量(能力・知識・経験)などの条件によって変わる。

 原因が外部にある場合(受動的リスク)と、内部にある場合(能動的リスク)とに分けられる。確率(頻度)と結果の重要性を含む。事故・災害の確率×事故・災害が起きた場合に予想される損失(or利得)の大きさ

 リスク=傷害の重大さ(最も重い傷害)×傷害の発生確率(回避の不可能性)×暴露時間(暴露頻度)


●受動的リスク(Involuntary Risk or Passive Risk)

 個人が選択できないリスク。自然災害(自然発生的リスク)や戦争がこれにあたる。リスクが能動的か受動的かで、受容レベルが極端に(約1000倍)異なる。能動的リスクは受容しやすい。


●能動的リスク(Voluntary Risk or Active Risk)

 個人が選択可能なリスク。行動に伴って発生するリスク。


●純粋リスク(Loss only Risk)

 自然災害のように損失Lossだけが発生するリスク。利得Gainが隠れていて見えないか別の次元にある場合と考えられる。


●投機的リスク(Loss or Gain Risk)

 成功すれば利得Gainが発生し、失敗すれば損失Lossが発生するリスク。一般の多くのリスクはこれに相当する。新たな行動に伴って発生するリスク。「能動的リスク」と重なる部分が多い。株式投資やギャンブルなどは利得Gainと損失Lossの対象・尺度が同じで理解しやすい。

 山の場合は成功すれば達成感や名声が得られ、失敗すれば生命や身体への危機・傷害が発生する。利得Gainと損失Lossの次元が違う。対象が非対称であるのが普通。


●危害(Harm)

 人体の受ける物理的な損傷若しくは健康障害、または財産若しくは環境の受ける害(damage)


●傷害(Damage)

 損害、損傷


●デンジャー(danger)

 コントロール不能の危険( 危険性、危険なもの[人,事]、 脅威)


●ペリル(peril)

 損失の直接原因(危険、 危難、危険なもの)


●安全(Safety)

 受け入れることのできないリスクからの開放(freedom from unacceptable risk)


●許容可能なリスク(Tolerable Risk)

 その時代の社会の価値観に基づいて、所定の状況において受け入れられるリスク。


●リスクの推定(Risk Estimation)

(確率Probability×損失Lossまたは、利得Gain)を推し量って決めること。


●リスクの判断(Risk Evaluation)

 誰にとって、どの程度重大(影響と致命度)か、見分けて決めること。


●リスクの評価・査定(Risk Assessment)

 リスクの推定とリスクの判断。何が事故を起こし得るか?結果と影響は何か?それは受容できるか?受容できるリスクとするための安全防護策と制御は適切か?に答えること。

 リスク評価⇒ @発生の可能性(頻度)×A予見の可能性(不確実性)×B影響の致命度(致死率)×C波及の範囲(規模)


●リスク管理(Risk Management)

 リスクの推定・判断⇒評価⇒回避・予防・影響度の軽減⇒確認⇒フィードバック。リスクは受容できるか?そのための安全策は適切か?の判断を行う。


●危機管理(Emergency Management)

 リスク管理(Risk Management)と危機管理(Crisis Management)の両方の意味を持つ。前者は災害前を、後者は災害後を対象としている。米国の連邦危機管理庁では時計モデルと呼ばれる時間的に事前対策としての@ミティゲーション Mitigation(被害抑止)、Aプリペアドネス Preparedness(被害軽減)、事後対策としてのBレスポンス Response Relief(応急対応)、Cリカバリー・リコンストラクション Recovery・Reconstruction(復旧・復興)の4つのフェーズからなる。


●受容できるリスク(Acceptable Risk)

 あるグループあるいは個人にとって、どのような状況ならリスクが受容されるかに関する概念。Starrは受容できるリスクは自然災害の死亡率と、全疾病による死亡率の間を提案した。ただし便益やコストの関数としている。


●リスクの分類(Risk Classification)

 (1)因果関係が明確にされ統計資料のあるリスク。(2)因果関係の疑いがもたれているリスク。(3)まだ起こっていないリスク。(4)予見できないリスク


●不確実性(Uncertainty)

 不確実性はその程度に応じて、確率分布さえ全く特定できない無知性(Ignorance)、リスクと無知性の中間にある曖昧性(Ambiguity)、リスク性(Risk)の3ランクに分けられる。


●条件確率(Conditional Probability)

 その事象の死亡確率=その事象の起こる確率×その事象が起こったら死亡する確率(条件確率)。とした場合、条件確率のみで判断する錯誤に陥りやすい。


●事前確率と事後確率(Preliminary Probability & Approval Probability)

 事後の確率判断のほうが、事前の確率判断(ないしは、客観的に妥当な確率判断)を上回る。


●プロスペクト理論(Prospect Theory)、確率認知の理論

 利得(Gain)に関しては無難な選択が魅力的に感じられ(Risk Averse Tendency)、損失(Los)についてはリスキーな選択枝が魅力的に感じられる(ギャンブルGamble的認知・リスク選好Risk Prone Tendency、リスクテイキングRisk Taking)現象。利得と損失では心理イメージが非対称であることによる。


●外的統制感(Locus of Control)

 自分に起こる良いことも悪いことも自分のせいではなく運不運や他者のせいにする傾向。外的統制感の強い人はリスク管理に不向きであり、無駄であっても最後まで努力を続けるような人が求められる。


●幻想的統制感、制御幻想(Illusion of Control)

 コントロール不可能と思っていながらも、コントロールが可能のように振る舞う傾向。文化・社会による差異が大きいとされる。期待するサイコロの目の大きさにより振り方を変えるような現象。

 実際には偶然によって生じているのに、自分の意図と能力によって統制できると錯覚する現象。自尊心の自己防衛論的観点で説明される。ランガー


●残存リスク(Residual risk)

 リスクの内、防護しきれない部分をいう。詳細はリンクファイルを参照。


 ※リスクといえば、経済的なリスクや災害・事故、疾病を対象に考えています。登山にはもちろんリスクはつきもの。

 リスクばかり考えていては山登りなどできませんが、リスクを正しく判断しないと命が幾つあっても足りません。 生きるとはリスクの最適化をはかること。

先頭へ戻る